最近は集客に関することに傾倒しておりましたが、元々は環境教育や環境保全に関わっていたので、そちらを完全に忘れてしまったわけではありません。
自然と持続的な形で関わり続けることができるのか?という問いは、常に頭の中にあります。
支笏湖では、支笏湖環境保全協力金という制度が動いています。
環境保全協力金は、受益者負担という考えをベースに水辺を使う人たちで地域を保全していこうという考えのもと、一般利用者、ガイド事業者などが1名あたり500円を支払い、環境保全活動を推進していくという形です。
かのあは、支笏湖運営協議会に所属し、環境保全の実施の部分に関しても代表の松澤が参画しています。
さて、制度としてはとても有益であるのは間違いないのですが、まだまだ課題は山積しています。
こういった課題を一つ一つ紐解いていき、より良い地域を作っていくことで支笏湖地域が自然と持続的な形で関わり続けることができる場所になる未来があるのは間違いありません。
環境保全協力金が実証実験を経て本格始動したのが2024年。
かのあではこの2年で、およそ400万円ほど環境保全協力金を集めました。
かのあ自体は小さなガイド事業所ですが、私たちにもまだまだできることがあると考え、今シーズン売上の一部が環境保全協力金になる「寄付型グッズ」の開発・販売を開始しました。
私は「寄付型グッズ」をソーシャルビジネスであると定義しています。
ソーシャルビジネスとは、ビジネスの手法を用いて、貧困・環境・福祉・教育など様々な社会課題の解決を目指す事業のことです。
地域を持続可能な形で運営していくために自然に還元されていくお金の流れを作るのが環境保全協力金であり、その対象や裾野を広げるために「寄付型グッズ」を運用してく、という目標です。
そう、支笏湖に遊びに来てくれた人全員が受益者であるという再定義です。
まだまだ動きとしては小さいかもしれませんが、地域がより良くなる一つの解なのではないかと、そろーりそろり動いている様子をレポートします!
もくじ
今回の内容
- お土産に注目!
- ソーシャルビジネスを理解する
- 仕入れは大変だ
- かのあで販売開始
- 仲間を増やしていく
お土産に注目!
かのあでは、昔からお土産の販売を行っていました。
といっても商品点数で言えば、7〜10種類程度の細々としたものです。
しかし、個人的にはお土産は非常に注目していました。
というのも、私個人の感覚ですが、お土産を買う、という行動を行うのは、その体験や時間が良かったからこそ発生する明確な定量情報であると考えています。
ツアーを体験してくれて「楽しかったです!」とお伝えいただくことも多く、それも非常に嬉しい出来事ですが、お土産を買ってもらうところまで心を動かすことができたかどうか、つまり、「いいツアー」ができているかどうかの一つの指標ということです。
ということで、お土産の販売に関してはチラチラ確認していて、販売個数や売上推移などは定期的に確認していました。
とはいえ力を入れた商品開発を行っていたわけではないので、販売個数も売上もそこまで大きな成果にはなっていません。
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しかし、これまで行ってきたデータ収集は実際の動きなので、この動きを参考に1からお土産を勉強して結果を出すべく動き出します!
ソーシャルビジネスを理解する
ただただお土産を販売するのではなく、売上の一部を環境保全協力金にするというスキーム自体を開発するということなのでただのビジネスではなくこの事業をソーシャルビジネスとして行っていきます。
個人的にはソーシャルビジネスを下図のように整理しました。

かのあは丁度真ん中に位置しているのではないかと思っています。
ここからビジネスをガンガン伸ばしていく道もあるし、ここでソーシャルビジネスを始めるという選択肢もあります。
ソーシャルビジネスは、社会的価値の創出を目指す色合いが強いです。
もちろん、通常のビジネスもスタッフの雇用を守り、税金を支払い、その税金が福祉に使われるといった社会に価値を提供する行為です。
どちらも素晴らしいですが、個人的には直接環境保全などを運用していく意味合いが強いソーシャルビジネスを地域で動かしていくという未来の方が良さそうな気がします。
まだまだ理想論ですが、こういった狙いを持って「寄付型グッズ」の運用を開始しました。
もちろん同時進行として「本質的な環境保全とは?」という問いも常に考え続けています。
物販は大変だ
さて、物販なんぞ人生でやったことがないので0からお勉強のスタートです。
デザインに関しては以前作成したCustoMiiRのボトルに使用したロゴがあります。
このロゴを使用した商品開発がシーズン1になります。

前回のMiiRボトルではペットボトル削減のためのマイボトルというテーマを持ち、リフィルやレンタルボトルといった活動を実施していました。
今回はお土産ということで、もう少し広く構えるために「日常で支笏湖を思い出す」というお土産本来のテーマを使用して、物品を作成していきます。
そう考えると、カヌーをロゴなどで使用してしまうとかのあのツアーに参加してくれた方にはバッチリですが、支笏湖に遊びにきた人にとっては関係のないアイテムになってしまいます。
そういう意味でも、以前作成したロゴは支笏湖がベースとなっているのでバッチリです。

今の時代は、OEMと言いましょうかプリントサービスは様々あり、オリジナルアイテムを作るハードルは非常に低くなっています。
ロゴをデザインに使用して、アイテムを作っていきます。
1シーズン目は、全19種類の商品には、売上の5%が「支笏湖環境保全協力金」として自動的に寄付される仕組みが組み込まれています。
さて、ここで大きな悩みの種が。
売値はどうしたらいいのだろうか?
その辺りも全くわからなかったので、大急ぎで調査し、悩みに悩んで設計しました。
そして、勉強する中でこのような整理を知ります。
| 目的 / 購買者 | ユーザー(使用者) | ギフター(寄贈者) |
| PR(集客) | ①ほとんど利益なしでOK | ②ほとんど利益なしでOK |
| ブランディング | ③ | ④ |
| 利益 | ⑤ | ⑥ |
何のためのお土産か?というポジショニングの整理です。
まず大目標が、寄付型グッズを購入してもらい、環境保全に参加してもらう。
そしてもう一つのテーマが、お土産で「家の中に入り込み」、支笏湖を忘れない、思い出すトリガーとしての役割があります。
これはPRに近く、①に該当するリピーター施策なのかもしれません。
とはいえ、ボランティアで販売するのが是でもないことからお土産の相場を勘案した上で、物にもよりますが原価を大体4〜5割に設定して売値を決定しました。
もちろん、原価は発注するスケールサイズで変わってきますので、まだまだ手探りにはなりますがひとまずこれでスタートです。
| 商品名 | 販売希望価格(税込) | |
| キャンバストート(S) | ¥1,400 | |
| キャンバストート(M) | ¥1,550 | |
| 定番陶器マグカップ | ¥1,600 | |
| セルトナ・スタイリッシュマグカップ(ブルー) | ¥1,850 | |
| セルトナ・スタイリッシュマグカップ(レッド) | ¥1,850 | |
| セルトナ・スタイリッシュマグカップ(オレンジ) | ¥1,850 | |
| ミニハンカチタオル | ¥800 | |
| スフィア・生分解性樹脂マグカップ 蓋付 300ml | ¥1,900 | |
| パステルキッチン ミトン&鍋敷き | ¥1,850 | |
| Printstar ヘビーウェイトTシャツ(ホワイト) | ¥3,300 | |
| Printstar ヘビーウェイトTシャツ(インディゴ) | ¥3,300 | |
| CustoMiiR 23oz Narrowmouth | ¥5,720 | |
| ウォッシュキャンバスエプロン(クロスタイプ) | ¥8,400 | |
| キーチェーン楕円 | ¥500 | |
| キーチェーン角丸四角 | ¥500 | |
| 除伐材 箸置き | ¥350 | |
| 缶バッチ | ¥400 | |
| 丸型コースター(ウッド) | ¥500 | |
| 角丸型コースター(ウッド) | ¥500 |
さて、これで商品を注文し、手元に届いて準備は完了しました。
次は、実際に販売していくフェーズです。
かのあで販売開始
かのあの物販スペースは、そこまで大きなスペースを用意していませんでした。
今回は、シリーズものということもあり、まとまった状態で販売スペースを作流のが理想的だったので、店内のレイアウトから調整し、物販スペースの拡張しました。
スタートはこのようなイメージ図から。

おしゃれな雑貨屋さんをイメージ、イメージどころか直接見に行って構想を固めます。
そして、棚を買いに行き、みんなで組み立て、陳列しました。

なんだかそこそこ、それっぽくなりました。
よし、これで自社販売に関してはスタートが切れます。
そして、こういった活動はPRをしておいて損はないので、PR Timesを使用してプレスリリースを行いました。
そして、この記事のメインが「支笏湖来訪者184万人中、99%以上が未参加の課題」という部分です。
日本有数の透明度を誇る支笏湖には、その美しい自然を求めて国内外から多くの観光客が訪れます。
しかし、その裏側には大きな課題が存在します。
- 支笏湖来訪者総数(令和6年度推計):約184万5千人
- 環境保全協力金を利用したアクティビティ参加者:17,979名
現状、何らかの形で環境保全に直接貢献しているのは、来訪者全体のわずか約0.97%。つまり、残りの約99%にあたる約183万人の来訪者は、湖の恩恵を受けながらも、その環境を守る活動に「参加する機会」がありませんでした。
受益者負担という構造上、現状はアクティビティ参加者に限定されていた部分を、お土産にすることにより誰もが参加できる環境保全活動へ。
これがなかなかいい記事が書けたな〜と自画自賛をしております。
さて、この活動が、かのあだけで終わってしまっては成果は限定的ですし、広がりはありません。
この活動をより多くの人々に参加してもらうために、続いて仲間集めに動きます。
仲間を増やしていく
さて、支笏湖に遊びにきてくれた人々全員が対象であると考えると、みんなに仲間になってもらい、販売場所が増えていくというのが理想的です。
まずはこの活動の輪郭を知ってもらうために企画書を作成します。

全13ページの企画書を作成したのですが、この時に整理するべきことが山ほどありました。
まずは、契約方式を
- 買取仕入れ
- 委託販売
のどちらにするか。
買取仕入れは、在庫は受け取り先が責任を持つことになってしまうので、なかなか導入するハードルが高くなります。
そこで委託販売も可能にし、在庫はかのあに残したまま、売れた分だけ手数料を取ってもらうという導入しやすい形式も作りました。
もちろん、それぞれの仕入れ額や手数料額をバランスよくしなければいけないので、頭から煙を出しながら整理しました。
そして、委託契約の場合にはどうやら契約書を締結してトラブルを未然に防ぐ必要があるらしく、契約書を作成。
よし、これで準備完了!
実際に営業を行い、結果は、
- 休暇村支笏湖
- しこつ湖鶴雅リゾートスパ 水の謌
- 丸駒温泉
- 千歳観光連盟 支笏湖支所
が賛同してくれることになり、寄付型グッズを売店で販売してくれることになりました!
これは非常に大きい、4店合計で年間何名の方々宿泊し、売店に立ち寄ってくれるかは正確な数字は分かりませんが、相当数の人々に知ってもらうことができ続ける構造になりました!
そして、最後にオンラインショップも開設しました。
オンラインショップの認知拡大はまた別の施策を走らせるとして、これでやれることはまずは全てできました!
今回の結果

今回の施策は、繁忙期を乗り越えたタイミングで動き出し、実際に販売を開始したのが10月の中旬でした。
そこから、コツコツ販売が動き、2025/12/21時点で合計販売額が192,230円になりました。
寄付額としては9,611円です。
およそ2ヶ月、かつ閑散期でこの成績ですので、これがたくさん支笏湖に人が訪れてくれる時期になればどれぐらいになってくれるものか。
そして嬉しい誤算が2つ。
1つが休暇村支笏湖がこの寄付型グッズの営業をしたタイミングで丁度、客室に置く水のペットボトルを廃止し、部屋にボトルを置いて廊下にウォーターサーバーを置くというサスティナブルな動きをするタイミングでした。
なんとタイミング的にボトルを残り3つのどれにしようか考えているタイミングに我らがCustoMiiR 23ozを選択肢に入れてくれ、最終的に採用してもらうことができました!
一部屋に2個づつ、合計75本の大型注文です!

驚くべき幸運!
そして、もう一つがしこつ湖鶴雅リゾートスパ 水の謌でアクティビティベースSIRIを新設するということで、そこでカフェ機能も加えるというタイミングでした。
そこで、今回の寄付型グッズのスフィア・生分解性樹脂マグカップをカフェでの提供に使用してくれるということになり、合計10個の注文をもらいました!
これまた想定外の注文です!
販売だけはなく、備品としても寄付型グッズを使用してもらえるという可能性を知りました。
まだまだ支笏湖地域での認知も全員にできているわけではないので、もしかしたらできることはまだまだあるのかもしれません。
コツコツ認知を広げ、最終的にはロードトゥー新千歳空港まで行けたらいいなと妄想しております。
今回の学び

ソーシャルビジネスは私の中で大きなテーマでした。
元々は公務員ということで、お金を稼ぐといったことは全く考えたことがありませんでしたが、だからこその限界もありました。
公務員時代に自分で企画した「アニマルハッピーマーケット」というイベントがあります。
この企画をいつ作ったかはもう忘れてしまいましたが、2025年になっても継続されているイベントなので、ある程度社会的意義のある試みだったのではあるので嬉しい限りです。
そこから民間に行き、売上を上げるために死ぬ気で向き合い、その考えをベースに収益の一部が環境保全という主流は税金で賄われるような分野に構造を作っていく道を歩み始めました。
その中で「アニマルハッピーマーケット」で実施していたお買い物が自然環境を守るという構造を支笏湖で転用。
そして今回の寄付型グッズの開発と販売に繋がりました。
こういった活動が根を張り、地域として資金と環境保全のサイクルが回り続けるようになれば、お金が無くて環境が守れないという未来ではなく、地域で守り続けていける可能性が高まります。
税金も無限にあるわけではないからこそ、自立した地域運営ができる状態を作り上げる未来を作りに行きます。
そんな未来への第一歩として、まだまだ小さな動きですが、これからも小さなガイドハウスでもできる施策をガンガン取り組んでいきたいと思います!

カヌーガイドは自然があるからこそできる仕事、その自然を守り続けるのはとても大切です

