かのあでは、アウトドア事業をビジネス的に成立させるために全ての箇所を総点検し、より良くできないかに日々心血を注いでいます。
今回のテーマは、団体プログラム。
かのあでは、一般的な北海道旅行をする方向けのネイチャクルージングツアーやプライベートカヌーツアー、そして旅行会社などの旅行商品に組み込んでもらうtoB向けの団体プログラムがあります。
そして、今年の夏、この団体プログラムを見直しました。
個人的に引っかかっていたのは
- ネイチャクルージングツアー:大人7,920円〜8,470円(季節変動)
- 団体カヌーツアー:1名7,500円
という価格差でした。

ふむ、なぜ我々は団体価格を安くしているのだろう?
この部分を考えていくとたどり着いたのが「薄利多売」という概念。
薄い利益をたくさん売って賄う、という戦略です。
さて、値決めに関してはずーっと、それはそれは長い時間ぶつかってきた問題です。
「値決めは経営」という経営の神様と称される京セラ創業者の稲盛和夫氏が提唱した経営哲学は頭の中にずっとあります。
さて、この団体プログラムの値決めがこうなっている理由、そう設定したロジックを洗い直しました。
そこにあったのは、プログラム内容に差別化ができていない、という問いです。
そこが理解できたのであればそれを改善し、収益性を上げることができる可能性を探りました。
まだまだ結果こそ出てませんが、一つ一つの構造を改善し、より良い結果を求めて七転八倒するリアルドキュメントです!
もくじ
今回の内容
- なぜ団体を安くするのか?を深ぼる
- 現状を改善する差別化
- 申込者は誰だ?toBを対象としたホワイトペーパーを作成
なぜ団体を安くするのか?を深ぼる
まずは現状を整理です。
時 間:90分
料 金:大 人 7,920円~8,470円
小学生 4,950円~5,500円
幼 児 3,300円 ~3,850円
定 員:2〜16名
時 間:90分
料 金:1名 7,500円
定 員:10~30名まで
基本ベースはネイチャークルージングツアーを団体対応にしている形で、内容としては大きな違いはありません。
シンプルにグループサイズが10名以上かどうかだけ、という点だけです。
そう、差別化は全くできていません。
だからこそプログラムタイトルが「団体」があるか無いかの違いしかない、ということでも理解できます。
そうなると、ロジックとしてはシンプルでたくさん人が来てくれればOK
→価格は少し安くするとより参加件数が多くなる
→売上最大化につながるのではないか
といった価格設定の流れです。
これが「薄利多売」になってしまう構造となります。
ある意味これは仕方のない構造とも言えます。
これを自覚した時に、ではこれをより良くするためにはどうすればいいか?団体プログラムの本当の価値はどこか?というのを考え始めました。
その問いの回答としては「団体プログラムだからこそ得ることができる価値を提供する進化」です。
現状を改善する差別化
団体プログラムも、対象の構成は様々です。
- 旅行会社のパッケージツアーで、初めて会う人との旅行
- 名前は知っているけど組織が大きいので普段はあまり関わりのない人たちでの社員旅行
- 普段から密接に関わりがある人で構成されている社員旅行
- ゼミやサークルでの旅行
などなど、同じ団体プログラムへの申し込みでもその参加者構成は様々。
このようにそれぞれが違う構成の場合、ネイチャークルージングと同じように全員が平等な体験ができ、初めて会う人でも問題がないツアー構成が無難です。
もちろん、普段からコミュニケーションが取れているメンバー間で同じ時間を過ごし、楽しい思い出を残すというのも非常に重要です。
しかし、もう一歩進んだ何かがそこにはあるのではないか?それを実現できるからこそ「団体である価値」を作ることができるのではないかと考えました。
そして整理したのが次の図です。

グループサイズとツアーの質を、四象限で整理してみました。
ここで整理しておきたいのが、旅行会社のパッケージツアーの団体と同じ組織やグループの団体は違う、という点です。
P-①(Pはパターン)は旅行会社のパッケージツアー、そのためネイチャークルージングと同じような属性であるという整理です。
一方、同じグループ団体は属性としてプライベート対応に近い。
そのため、内容をセミカスタマイズで調整を行い、対象のグループ属性によって最適化できる、それが団体プログラムの本来的な「価値」なのではないかと考えました。
特に社員旅行など同じ組織に所属している参加者のみの場合は、内容としてはコミュニケーションの色を濃くすることができる。
そういったパターンの時に、楽しい思い出+親睦やチームビルディングの要素を入れることで、シンプルな楽しい時間に加えて、職場に戻ってからも円滑なコミュニケーションが生まれるキッカケになりうるのではないか?
もちろん先方の希望でシンプルに楽しい時間にしたい、であればそうすることも可能です。
これらのセミカスタマイズは、ネイチャークルージングや団体P-①では不可能であり、同じグループ団体を対象としたプログラムだからこそ実現可能です。
そういった整理をした上で、実際に団体プログラムのでどのようなことができるか?を整理しました。
コミュニケーションの要素を追加するために、例えばカヌーに乗るグループ分けをグループワークを設けて、バースデーチェーンで誕生日順や出身地と支笏湖までの距離、といった普段なかなか話題にすることのないパーソナルな情報をお互いに知り合うきっかけを作ったり、カヌーに乗りながらできるグループワークを取り入れるなど、シンプルに自然を楽しむだけではない時間にするという構成にしました。
まだ実現できてはいませんが、これをより発展させ、チームビルディングの要素を強くし、団体プログラムの中でチームワークを深める時間を作るという発展もあり得ます。
このように、単純にカヌーに乗る、自然を楽しむ、だけではない時間にできるのが団体プログラムの価値であり、ネイチャークルージングとの差別化ができるからこそ、最終的なアウトプットとしての価格の部分で安くする、という選択を取らないで同じ価格、またはより高い価格に設定できることになります。
今シーズンは丁度大きな規模の企業の社員旅行が入り、コミュニケーションの要素を強くしたプログラム構成にして実施。
ガイドチームで改善内容をふりかえり、メインガイドの役割とサブガイドのサポートする視点といった連携のレベルアップができました。
2026年は、まず最もミニマムな全身として価格はネイチャークルージングと同額にする、という計画です。
申込者は誰だ?toBを対象としたホワイトペーパーを作成
そしてここからはマーケターとして。
団体旅行は、旅行会社または幹事が行き先を決めます。
そう、参加する人が申し込むわけではないんですね。
であれば、そういった判断をする人にツアーの魅力や内容を理解してもらわないといけません。
HP上で内容を全出ししてしまうのは(おそらく)あまりよろしくないのでないかと考え、そういった判断をする方を対象としたダウンロードするというワンクッションを置くホワイトペーパーを作成することにしました。
ここでは手の内を全て出す勢いで、ツアーのベースであるインタープリテーションの解説や催行率、レビューなどなど申し込む際に考えるであろう不安要素を全て潰し、かのあの実績をすべてまとめる勢いで作成し、そのページ数はなんと71ページの大作となりました。
目次は次のとおりです。


旅行会社も幹事も変なところに連れて行ってしまったら、マイナス評価が発生してしまう真剣勝負。
支笏ガイドハウスかのあの団体プログラムに参加したら少なくともいい時間になる可能性が高い、と思ってもらわなければいけません。
その不安を少しでも無くしていくためにえいや!で申し込むギャンブルではなく、成功確率が高い依頼先として認識してもらうツールが必要ということで、今回のホワイトペーパーを仕上げました。
そしてこのホワイトペーパーは、公式HPにダウンロードフォームを設置。

まだまだ実際にはダウンロードされてこそいませんが、おそらく興味を持ってページに来てくれたら思わずダウンロードしてまうのではないかと思っています。
フォーム形式にしたのは、リストとして積み上げ、どのような企業が興味を持ってもらっているかを確認する意味合いもあります。
これで現状販売しているツアーをそれぞれ深掘り、やるべき施策は大枠ではやり切ったような気がします。
ホワイトペーパーを作るのは大変でしたが、こういったアプローチをコツコツ積み重ねた先に「アウトドアで生きていく」という未来があるのではないかと思いながら、今日もパソコンと向き合っています。
今回の結果

このホワイトペーパーですが、作成するきっかけとして毎年札幌で開催されている商談会がありました。
今年で3回目?ぐらいの参加でしたが、毎年何も手応えがありません。
商談会ですので、商談相手は旅行会社などの方々で、どのようなことを知りたいか?というのを探るための2年だったように思います。
今年は満を辞してホワイトペーパーの作成をし、かのあの団体プログラムの内容をしっかりと理解してもらえる状態を作った上で、お互いのニーズがマッチしたら実際の仕事につながっていく。
とはいえ、正直今年も手応えがあったかというと微妙なラインです。

ニーズは旅行会社ごとに違いますし、団体のスケールが大きい希望が多くあまりマッチできない印象でした。ムズイ
商談会だけの利用で終わってしまってはもったいないので、HPに設置したホワイトペーパー。
これは待ちの営業です。
もしかしたら、このホワイトペーパーを使ってガンガン営業していくという、攻めの営業も必要かもしれません。
とはいえ、今まではそんな選択肢はありませんでしたから、こういった施策をコツコツ積み上げて確率を上げていくことを愚直に行なっていくのは非常に大切なのではないかと考えます。
現状は、自社集客が大幅に増やすことができ、それにオンする形で旅行会社やOTAと付き合っていくという理想的な座組に近づいてきました。
2024年の旅行会社経由の団体プログラムの売上が2023年比でなんと71.5%減というびっくりするような減り方をしました。
ある程度手堅い収益源かと思っていたのですが、旅行会社のパッケージツアーの集客に関してはこちらでできることは何もない定数になるので、ここに体重を載せすぎるとリスクが高まります。
なぜこんなに大幅減をしたのかも正直分析できませんし、2025年はここから+264.6%の爆増で2023年比+3.7%と戻りました。
なぜだ?と大きな疑問符が…。
一喜一憂しつつ、本質論で考えれば、私たちがやるべきなのはいいツアーをする、の一点。
かのあに連れて行けば間違いない、ということを旅行会社に理解してもってさえいれば、集客が成功するかしないかはその時の時流に任せつつ、リピートで組んでくれるパッケージツアーの数をある程度抑え続けていけば問題なしという整理をします。
団体はボーナスとして手堅い収益の柱として安定してもらうために、それがよりワークしていくために何ができるかを、もう少し考えていきたいと思います。
今回の学び

今回の一番の収穫は、受け入れる側のガイドは個人戦になりがちですが、団体プログラムはチーム戦になる点です。
実際にチームとして団体プログラムを行い、全員でふりかえりをして、改善点を洗い出し、プログラムとしての価値を上げていく。
こういった仕事はやっていて非常に楽しい。
まだまだ発展途上ではありますが、チームとしてみんなで真剣に向き合う時間をどんどん増やしていきより良い組織を作っていきたいものです。
そういう点も踏まえて、かのあで一次情報として得た知見をアウトドア業界でどんどん広げていくということも必要なのかな〜という気もしてきました。
先日とある集まりに行って久々に出会った「隠している場合じゃない」という環境教育の現場で言われているキーワード。
個人としてだけではなく、チームとして、業界として。
ぼちぼちそういった視座での活動もゴリゴリやり始めるタイミングが来ているのかもしれません。

誰のために、なんのために、自分が頑張る意味を最大化できる活動は何だろう?
