残りの改善 12コ!

#086 チップ制度を作ってみたらなんだかハッピーになった!

本日の記事の概要

日本のガイドサービスに実験的に「チップ制度」が導入され、「結構な当たり」となった。これは、カヌー体験の本質的価値に加え、ガイドとのコミュニケーションという「付加価値」がゲスト満足度を決定づけるという考えに基づいている。運用面では、事前決済に対応するため、ツアー後に物販として物理的な「チップカード」(3パターン)を購入し、担当ガイドに渡す仕組みを設計。1シーズンでガイド6名が合計117,000円を獲得し、昨年までは生まれていなかった価値提供への対価を得た。この制度は、ゲストは満足すればチップが発生し、ガイドは頑張れば報われるWin-Winの構造を構築し、チップ額はツアーの質を定量的に評価するモチベーション装置となっている。

気がつけば11月も後半。

今年もなんとか繁忙期を生き抜いて、力を貯めるシーズンに突入しました。

鈴木 悠太
鈴木 悠太

割とやるべきことはクリアに

今シーズンも、色々と実験的なチャレンジを行い、結果が出たものもあれば、結果が出なかったものもあり、学びの多いシーズンでした。

その中でも今シーズンの目玉といっても差し支えないのが「チップ制度」の導入です。

なかなか日本人にとって「チップ」というのは馴染みのない文化。

とはいえ、情報収集する中で飲食店や美容室などでチップ制度を導入しているという話をチラホラ聞いていました。

選択肢としてはあり、いや結構大きくガイドという仕事の価値に関わる施策になるのではないか?と考え、具体的に考えてみました。

オペレーションはどうするか、どういう流れがスムーズか、いやらしくならないためにはどうすればいいか?を考え、実際に施策を走らせてみることに。

これが結構な当たりです!

今シーズンだけで、ガイド6名で得たチップの合計が2024年12月〜2025年11月までで117,000円に!

これは昨年までは生まれていなかった価値提供に対する対価です。

成果はそれだけではなく、ツアーに対するガイド頑張ったことへの具体的なフィードバックによるやりがいや、ツアー満足度を測る一つの指標といった副産物も。

今回は、「チップ制度」の設計から効果までをご紹介します!

今回の内容

  • チップを考える
  • チップ制度を設計する
  • チップ制度の効果

チップを考える

今回の施策であるチップ制度。

この考えのスタートは、情報収集の中で飲食店や美容室などでの実例を知ったところからでした。

この時に意識したのが、ビジネス構造として転用できる共通点があるかどうか。

特に参考になったのが美容室です。

美容室は、もちろん「髪を切る」ということのために行きますが、髪を切ってもらいながら行うコミュニケーションがあり、「その美容師の方に切ってもらいたい」というリピートが発生する。

そこには単純な髪を切るという価値提供に加える形で、付加価値としてのコミュニケーションが含まれています。

鈴木 悠太
鈴木 悠太

もちろん人によってそれを話しかけてもらいたくない人もいますけれどもね(私は寝たふりをします)

では、アウトドアアクティビティツアーは?と考えた時に観光ツアーの本質価値はカヌーに乗り自然の中に行くことです。

そこに「付加価値」としてガイドとの「コミュニケーション」が満足度を決定付ける要因であると考えています。

ゲストは北海道旅行の中でアクティビティに参加し、何を得たいか?

それは単純にカヌーの乗りたいという意思がありますが、ただ単純にカヌーの乗り(美容室で言えば髪を切る)、自然を五感で感じ、自然の情報を知るためだけに来ているのではないのではないか?

そこには「旅行をいい時間にしたい」と言う欲求があるのではないかと考えています。

旅行の中で、宿泊したり食事を取ったり、そのような時間の一つにアクティビティが位置し、それは前後を含めたトータルでその旅行というものがいい時間だったかどうかが決まっていく。

そのために、ツアーの中にはカヌーの乗り方を伝えるインストラクションや自然の情報伝達というインタープリテーションという部分が本質価値。

それに加えて、その地で生活しているガイドとのコミュニケーション、具体的には旅行のトラブルの共感や次はどこかおすすめの場所はないかといった相談といった、コミュニケーションの時間を提供するというのが、観光ツアーの重要な「付加価値」なのではないかと考えます。

鈴木 悠太
鈴木 悠太

本質価値はカヌーツアーでの体験、付加価値としてコミュニケーションという整理ですね

その割合は、参加するゲストによって微調整する必要があり、自然にどっぷり浸かりに来たゲストにはもちろんインタープリテーションの割合を増やし、観光旅行が目的の方にはコミュニケーションを増やす、といった見極めのスキルが重要になります。

その見極めがうまくいきゲストが求めていた期待値を超えることで、初めて、「チップを渡したい」という心情になり、チップが発生するという流れとなります。

飲食店でのチップに関しても、エンタメレストラン系でこのチップが設置されている事例があり、エンタメの部分は店員さんの頑張り次第で満足度が変わり、噂では給与と同額ぐらいのチップを稼いでいるという方もいるとのことです。

チップ制度を設計する

では、実際にどういう流れにしていくかをかのあのツアーに当てはめていきます。

ここで重要なのが

  • スムーズな支払い
  • 認知の獲得

という2点が重要でした。

まず悩んだのが「スムーズな支払い」。

参考にしていた美容室やエンタメレストランなどは、通常後払い。

帰りにお会計をする際に、お代と合わせてチップを決済するという流れでした。

しかし、かのあではツアーの予約のタイミングで決済を行う事前決済が100%、当日参加でもツアー前会計、とお会計を行うタイミングで合わせてチップを支払ってもらうという構造ができません。

こればかりは大枠の構造をイジるわけにもいかないので、チップを物販と同列として、

  • ツアー終わりに物理的な「チップカード」を購入してもらう
  • その「チップカード」を担当ガイドに渡してもらう

という流れにしました。

このカードは、ラクスルの名刺印刷を利用し、1枚あたり16円程度で作成。

チップカードに円や¥などを入れなかったのもこだわりです。

これも心理的ハードルを作らないための工夫となります。

1000・3000・5000の3パターンにしたのは、こういった設計にしたら真ん中を選びやすくなるのかな?という思惑がある黒スズキの策略です。

次に「チップ制度がある」ということをゲストの方々に知ってもらわなければいけません。

そこでツアー前に全員に行なってもらう保険登録フォームで告知するという方法を取りました。

ここでは説明文を本当にサラッとしたものにして、いやらしくならない、やらないとダメと感じないような配慮を行いました。

もちろん、日本語だけではなく、英語、簡体字、繁体字と全ての保険登録フォームに入れてツアーに参加する全員に少なくとも存在だけは知ってもらえるという流れを作成。

これであとは通常通りのツアー参加、物販の購入の流れに乗り運用していくことができる状態になりました。

最後に会計処理です。

鈴木 悠太
鈴木 悠太

ここが結構重要

チップは売上ではなく、雑収入として計上する必要があります。

エアレジを挟むので、自動的に会計ソフトに反映され、その際に雑所得で仕分け、税区分は対象外(ここ大事!チップは消費ではないので非課税に)です。

この辺りは判断が難しかったので税理士に確認しました。

そして集まったチップは、ガイドに源泉徴収(ここも大事!)をして給与に上乗せして毎月精算します。

チップ制度の効果

このチップ制度のいいところは、ゲストは満足するからチップが発生する、ガイドは頑張ればそれが跳ね返ってくるというWin-Winの構造である部分です。

今まではゲストは満足感を持った場合、レビューを書いたり、お土産を購入するという形でその気持ちを昇華してくれていました。

それにもう一つ昇華する方法として、チップ制度が追加された形で選択肢が増えました。

ガイドも今までは頑張っても頑張らなくても特段何かの変化があるわけではありませんでしたが、頑張ることでその対価が見える形で発現するという、小さいですが一つのモチベーション装置になりました。

また、ツアーの質を定性的ではなく、定量的に評価することができる点も非常にいいポイントです。

私個人としては定性での評価は非常に難しく、定量化できる

  • レビュー数
  • お土産販売額
  • チップ額

といった定量で客観的に評価できる基準があることでPDCAを回していける構造が健全だと考えます。

鈴木 悠太
鈴木 悠太

いい旅したらお土産買いたくなりますもんね

前年に比べてチップの総額がどうだったか、という一つの指標が増えることで、現状のツアーの質を評価することが可能です。

理想は毎年右肩上がりであり、下がった場合は何か原因があるのかを考えるきっかけとなります。

ねらい
  • モチベーション装置
  • ツアーの質の評価

今回の結果

どうなるか、全く分かりませんでしたので、そろ〜りそろり昨年の12月から施策を走らせ、繁忙期を乗り越えて1周年。

結果はガイド6名で49件、117,000円のチップが集まりました!

これを厳密に分類していくと色々と面白いことが見えてきます。

  • 1000のチップが多いガイド。
  • 5000のチップが多いガイド。
  • あまりもらえないガイドw

とそれぞれの現状が見えてきます。

この結果を冷静に受け止め、ゲストとマッチしたツアーができているのか?ホームランを打つことができる理由がどのあたりなのか?を共有し、チームとして全体のレベルを上げていく糸口になります。

もちろんここには、日本のゲストとインバウンドのゲストがごちゃ混ぜで、正確には集計していないのですが、若干日本ゲストが優勢ぐらいの割合です。

こういう分析も面白いですね。

日本人も意外とチップを渡してくれます。

私も光栄なことに3件ほどチップをもらえましたが、全員が日本人の方でした。

この49件、117,000円というのは、昨年まではもしかしたら同じことが発生していた可能性がありましたが取り逃がしていた価値提供に対する対価です。

同じことをやっていても、こういった一見小さな改善の積み重ねで売上が変わり、ガイドの給与が変わっていきます。

組織として最適な形がどのような状態か。

まだまだ伸び代はたくさんありそうです。

今回の学び

本当に動かし始めてよかった施策です。

もしこの「チップ制度」を日本全国のアクティビティ事業所が取り入れ、ガイドは頑張ればその対価を得ることができる構造になった方が、いいツアーも増えて全体のツアーのレベルが上がり、いい未来になるのではないかと思います。

期待値を超える、だからこそ発生するチップは、まだまだその価値が見出されていない気がします。

もしかしたら飲食や美容室、アクティビティ以外の業界にも波及できるのかもしれません。

これがアメリカのように飲食店では半ば義務のように払わなければならない、となるとあまりいいことではありません。

いい時間だった!その先に任意で払いたいと思った人だけがチップを支払う、そのような構造こそが健全であり、本当に価値のあるアクションです。

ツアーの料金だって安くありません。

それを支払った上で、さらにチップを支払ってもらえる。

そんなツアーができるガイドハウスこそ、市場を生き残り、価値提供をし続けることができる企業である。

そんな企業になれるように、足元にある一番大事なツアーという商品の質をこれからもより良くしていきたいと思います。

#086 チップ制度を作ってみたらなんだかハッピーになった!
難 易 度 構造さえ作ればあとは手間なし
 (2)
費   用 ¥4,832円(チップカード代)
 (1.5)
おススメ度 是非とも取り入れて!
 (4.5)
鈴木 悠太
鈴木 悠太

個人的には元公務員として頑張ればその跳ね返りがあるという状態は非常に好ましいです

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