ご無沙汰しております。
なんやかんやありまして、落ち着いて思考を深める時間が取れず久々の投稿です。
気がつけば2025年シーズンも開幕。

時が経つのが早い
アウトドア事業を行う上で必要な要素はいい感じで把握できていると自負しております。
今回のテーマは、「キャンセル」。
恐ろしい言葉です。
「キャンセル」というワードを見ると、予約カレンダー更新しないと、間違えないように手続きしないと、売上どうなるかなーと、ネガティブな思考が巡ってしまいます。
可能であれば避けたい、というのが本音の部分です。
もちろん、旅行を計画する上で計画変更は付きもの、ゼロにすることは不可能です。
とはいえ、むやみやたらにキャンセルされてしまうとバックオフィスの業務で作業時間が莫大に取られてしまう。

思い出すのは数年前、毎日天気が変わって、予約をキャンセルしては再予約をするというのを7〜8回繰り返さすというゲストを思い出します。地獄だったなー
もちろん、受け入れ側だけのことを考えた判断ではなく、双方納得のいく形を作り上げるのが理想です。
となると、事前の約束である「キャンセルポリシー」として最適な回答は何か?
今日はその辺りを考えてみたいと思います。
もくじ
今回の内容
- キャンセルポリシーとは?
- 最適なキャンセルポリシーはどのあたり?
- 2023年以前のキャンセル率
- 2024年の変更点
キャンセルポリシーとは?
キャンセルポリシーは、予約のキャンセルに関するルールを明確化し、顧客とのトラブルを未然に防ぐための重要なツールです。
サービス内容や料金体系、キャンセル期限などを明記することで、ゲストは安心して予約を行うことができます。
事業者側から見ると、キャンセルポリシーは、ノーショーや直前キャンセルによる損失を最小限に抑える役割を果たします。
明確なルールを定めることで、キャンセルが発生した場合の対応を事前に決定し、顧客との間で起こりうるトラブルを予防することに繋がります。
最適なキャンセルポリシーはどのあたり?
2023年以前に設定していたキャンセルポリシーは
ツアー前日 | 50% |
ツアー当日 | 100% |
に設定していました。
これは私が、かのあに来た当初からこの設定でした。
もちろん、明確なキャンセルポリシーの「答え」のようなものは持っていませんでした。
OTAのアソビューでは、オンライン決済で自由にキャンセルポリシーを設定することができず、一定のフォーマット(柔軟・普通・厳格)から選択して設定する必要があります。
これは一つの参考になりそうですね。
かのあのキャンセルポリシーは、アソビューでいうところの「厳格」を少し柔らかくしたところみたいです。
上記の他に標準旅行業約款というのもあるみたいですが、関係なさそうなので一旦スルー。
厳格である自覚はなかったのですが、どうやら少し渋めの設定であるようなのは理解しました。
では、実際にこの設定でキャンセル率がどうなっているのか?を特定してみました。
2023年以前のキャンセル率
さて2022年と2023年のキャンセル率を特定していきましょう。
計算式はシンプルで
総キャンセル件数÷総予約数=総キャンセル率
で出てきます。
と思ったのですが、一つ含めなければいけない変数が。
キャンセルには荒天などでの催行中止もカウントされてしまいます。
その部分については取り除かなければゲストの意思でキャンセルをしている本当のキャンセル率が算出できません。
そのため本来のゲストの意思でのキャンセルを算出する計算式は
(総キャンセル件数 − 催行中止キャンセル件数)÷(総予約件数− 催行中止キャンセル件数)=自己都合キャンセル率
でゲストから依頼された本当のキャンセル率が算出できます。
2019年から2023年を整理してみたところ
総キャンセル率 | 自己都合キャンセル率 | |
2023年 | 20.1% | 16.3% |
2022年 | 21.8% | 20.3% |
2021年 | 20.0% | 18.4% |
2020年 | 23.3% | 22.6% |
2019年 | 16.7% | 15.7% |
2020年〜2022年は新型コロナウィルスの影響があるので少し自己都合キャンセル率が上がっているように思います。
おおよそ15〜20%の間、予約があったら5〜6件に1件がキャンセルされていた、という結果でした。

なるほど、こりゃ忙しいわけだ
この結果になっている要因は、やはりキャンセルポリシーなのではないか?という仮説が浮かび上がります。
2024年の変更点
正直このキャンセル率が高いのか低いのかは、判断が難しいところです。
とはいえ、予約管理をする立場ならこの件数が減って欲しいのが正直なところ。
こればっかりは市場に判断を委ねましょう。
ということでキャンセルポリシーを変更することにしました。
2023年以前は
ツアー前日 | 50% |
ツアー当日 | 100% |
でしたが、これを2024年は
ツアー2〜3日前 | 40% |
ツアー前日 | 50% |
ツアー当日 | 100% |
と、ツアー2〜3日前の設定を追加しました。
キャンセルポリシーを変更するリスクとして
- 予約数が減少する
といった変化は考えられます。

恐ろしい
市場がこの変更をどう捉えるか、は2024年の結果でわかってきます。
今回の結果

さて、2024年がどのような結果になったかを確認しましょう。
2024年の結果は
総キャンセル率 | 自己都合キャンセル率 | |
2024年 | 9.5% | 8.3% |

!?
なんということでしょう。
一桁になりました。
一覧で確認してみると
総キャンセル率 | 自己都合キャンセル率 | |
2024年 | 9.5% | 8.3% |
2023年 | 20.1% | 16.3% |
2022年 | 21.8% | 20.3% |
2021年 | 20.0% | 18.4% |
2020年 | 23.3% | 22.6% |
2019年 | 16.7% | 15.7% |
ぶっちぎっていて、驚きの結果に。
これはどう捉えたらいいのでしょうか。
変数として雨の日が極端に少なく、キャンセルする理由が少なかったのかな?という可能性がありそうです。
そこで気象庁が発表している統計データから5mm以上になっている日(夜間だけ降ってツアーには関係ない可能性もありますが参考値として)気合いでカウントした結果
総キャンセル率 | 自己都合キャンセル率 | 雨の日 | |
2024年 | 9.5% | 8.3% | 58日 |
2023年 | 20.1% | 16.3% | 62日 |
2022年 | 21.8% | 20.3% | 73日 |

ふむ、なるほど2022年は雨の日が多かったけれども2023年はそこまで変わらないね
つまり、雨が降ってるからキャンセルしよう、という理由でのキャンセルが2023年比で雨の日が4日減ったから約半分に減少したというのは考えにくく、ここはやはりキャンセルポリシーを変更したことによる変化であるという結論で大枠問題なさそうです。
別の角度で、以前記事にした事前決済。

事前決済にすることにより、もう支払った事実からキャンセルをする確率が減ると言われています。
事前決済を100%にした2023年は2020年〜2022年に比べ、自己都合キャンセルに関しては微妙に下がっているようにも見えますが、新型コロナの影響が大きすぎて判断がつきません。
加えて、2019年と比較すると同水準であるとも見えるのでもしかしたらそこまで大きな変化はないのかもしれませんね。

事前決済はノーショー対策としては抜群なのは間違いなしです。また、キャンセル料を徴収する上でもパソコンでポチポチすれば完了できるので、事前決済100%に切り替えない理由はありません。
最後に心配していた予約件数の変化も見てみましょう。
2024年は2023年比で総予約数は100.2%、参加件数は111%。
予約件数はほぼ同じでしたが、キャンセルが少なかった分で参加件数は伸びたという結果となりました。
キャンセルポリシーを変更したから予約数が減少し、売上が低下する、ということにはならず一安心です。
売上が伸びた、キャンセル手続きの作業負担が減った、という理想的でハッピーな結果に!
今回の学び

今回は、本当に良い結果を得ることができました。
しかし、これはシンプルにキャンセルポリシーを変更したから起こった現象とも言い切れません。
こういった微修正を行いながら、同時に集客でできることはなんだろう?という問いに対して本気で考え、できることを精一杯やった上での予約数がほぼ横ばいという結果です。
もし、何も集客に関してアプローチをしていなければ、予約数自体が下がっていた可能性も大いにあり得ます。
ギリギリの戦いです。
といっても、キャンセル率自体が減ることで、作業負担が減るのは明確です。
期待値コントロール、集客のアプローチ、良いツアー、といった事業として当たり前に価値を提供しているからこそこういった微修正でより良い状態を作っていくことができる。
攻めと守りのバランスを最適化していくのに、もう少しやれそうなことがありそうです。

自社の状況を分析した上で打ち込む一手であるのは間違いない